女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類のホルモンがあります。2つのホルモンは月経や妊娠、出産のかかわる他、女性の美容と健康にとって欠かせない存在です。ホルモンバランスの乱れによる不調や症状も起こりやすく、女性ホルモンは日常生活においても、大きな影響を与えます。
ホルモンバランスの変化について
エストロゲンとプロゲステロンという2種類のホルモンは、月経周期の中で交互に増減を繰り返しています。
エストロゲン | 月経~排卵の間(卵胞期)に分泌されます。 |
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プロゲステロン | 排卵~次の月経が始まるまでの間(黄体期)に分泌されます。 |
女性の心と身体の状態は4つの時期に分けられます
※この表は生理周期が28日(4週間)の人の場合を基準にしています。
※表は左右にスクロールして確認することができます
生理中の ブルーな時期 |
生理後の絶頂期 | デリケートな調整期 | 生理前の不調期 | |
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ホルモン |
卵胞ホルモン(赤線) 黄体ホルモン(黄線) |
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基礎体温 |
低温期 高温期 1日 7日 14日 21日 28日 |
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身体の状態 | むくみ、腰痛、肩こり、身体がだるく、疲れやすくなります。 | もっとも体調が良くなります。 自律神経のバランスが良くなり、特に副交感神経の働きが整い、リラックスできます。 |
むくみや便秘、肩こり、腰痛などが起こりやすくなり、食べた脂肪分が燃焼されにくくなります。 | 乳房が張って痛み、腰痛、下腹部痛、便秘、下痢、のぼせ、ほてりやすくなります。眠気が増す、または眠れなくなることもあります。 |
心の状態 | 憂うつで気分が落ち込み、無気力になります。 また、なんとなく気分が落ち着かず、不安でたまらなくなることがあります。 |
女性らしいやさしい気持ちにあふれ、外向きの気持ちも高まります。性欲がもっとも高まる時期です。 精神的にも安定し、自信がみなぎります。 |
心も身体も活動的でテンションが高まりますが、急に憂うつ感やイライラに襲われることがあります。 心の二面性があらわれてくるデリケートな時期です。 |
イライラや不安感がつのり、一番気持ちが不安定になる時期です。それを晴らそうとして、過食や深酒に陥りやすくなります。 |
肌の状態 | ニキビ、肌荒れなどが、起こりやすくなります。 肌が過敏になって、かぶれたり湿疹が出たりしやすくなります。 |
肌のコンディションが絶好調になる時期です。肌にツヤやハリが出て、メイクのノリも良くなります。くすみも取れ、ソバカスやシミもあまり目立たなくなります。 | 皮脂の分泌が盛んになり、肌には抵抗力がついて、自然な保湿もでき、肌の乾燥が防げます。ただし、不摂生をすると、次の時期にニキビをつくるもとになります。 | ニキビや肌荒れなどのトラブルがもっとも起こりやすい時期です。くまやくすみも目立ち、アレルギー反応も起こりやすくなります。 |
生活アドバイス | タンパク質や鉄分を補い、身体を温める食べ物を摂取し、ウォーキングやストレッチで血行を改善しましょう。 | ダイエットを始めるならこの時期が最適です。 新しい化粧品を試すのにも良い時期でしょう。 |
食べた物がそのまま身体につきやすい時期です。安定と不安定が入り乱れる時期でもありますので、あまりがんばりすぎず、ほどほどにいきましょう。 | 仕事や勉強が手につかなくなり、ミスが増えたり効率が悪くなったりします。運転事故にも気をつけましょう。 |
基礎体温について
基礎体温とは、起床時安静な状態で計測した体温のことで、生理から次の生理開始までの期間を1周期として、体温の数値をグラフ化することで体温の推移を観察します。
女性ホルモンのバランスとして、カラダと心の状態を知ることができます。
基礎体温でわかること
- 次の生理日の予測ができる
- 妊娠しやすい時期の予測ができる
- きちんと排卵がおきているか確認できる
- 女性ホルモンの分泌がされているか確認できる
- 妊娠の可能性が確認できる
- 更年期症状の早期発見に役立つ
- PMSや心身の不調やな時期などわかる
健康な人の基礎体温 |
排卵を堺に体温が低めの「低温期」と体温が高めの「高温期」の2層にわかれます。温度差は、0.3~0.7度ほどのわずかな推移です。 「低温期」と「高温期」の2層に分かれるのは、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の働きによるものです。 |
低温期しかない
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体温の変動が0.3℃以下と少ない場合、生理はあっても排卵がない(無排卵月経)が考えられ、不妊の心配があります。 |
二相に分かれない |
2つの女性ホルモンが正しいサイクルで分泌されないため、低温相と高温相の二相に分かれず、排卵もないと考えられます。 |
高温期が21日以上続く
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妊娠すると、黄体ホルモンが分泌されつづけるため、高温期が続きます。高温期が21日以上続く場合は、妊娠の可能性が高まります。 |
女性のライフステージごとに起こりやすい症状や病気
女性のライフステージは、下記に分けられます。
年代によって、女性ホルモンや体の状態も変化し、それぞれにステージで起こりやすい症状やお悩みがあります。
思春期
(8~18歳頃)
生理が不順
生理痛がつらい
生理前の体調不良
初経が始まってから月経が安定するまでの期間のこころとカラダの成長に伴い、ホルモンバランスが整うまで不安定な時期でもあります。
- 月経の異常(生理痛・生理不順・無月経)
- 生理前後の体調不良 PMS(月経前症候群)
- 貧血
- ダイエット
- 性感染症
性成熟期
(18歳~45歳頃)
生理のトラブル
デリケートゾーンの症状
生理以外の出血
下腹部の痛み
就職、結婚、妊娠・出産などさまざまなライフイベントにより生活や環境に大きな変化がある時期。また婦人科の病気などあらわれやすい時期です。
- 月経困難症
- PMS(月経前症候群)
- 子宮筋腫・子宮内膜症
- 子宮頸がん・卵巣がん・乳がん
- 妊娠・出産
- 不妊症
更年期
(45歳~55歳頃)
生理以外の出血
のぼりやほてりがある
イライラしたり、動悸がする
閉経が起こる前後5年間ぐらいまでを更年期と呼びます。
女性ホルモンが急激に低下する時期で、それに伴って心身のバランスを崩しやすい時期です。
- 更年期障害
- うつ
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん・乳がん
- 生活習慣病(動脈硬化・高血圧・肥満・糖尿病)
- 性交痛障害
老年期
(55歳頃~)
コレステロール値が高い
高血圧や骨粗鬆症が心配
トイレが近い
尿漏れトラブル
女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの分泌量が少なくなります。
閉経意向は生活習慣病のリスクが高まります。
- 骨粗鬆症
- 頻尿、尿もれ
- 萎縮性腟炎
- アルツハイマー病
ホルモンバランスの乱れから起こる症状
ホルモンバランスの乱れは不調の原因となり、以下のようなさまざまな症状を引き起こす可能性があります。
生理不順
成人女性の生理周期は25~45日が通常で、出血がある期間は3~7日とされています。ホルモンバランスの乱れによってこの周期が崩れたり、出血量が変化したりすることを生理不順と言います。
過少月経 | 経血の量が少なく、2日以内に生理が終わってしまいます。 |
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頻発月経 | 生理周期が24日以内と短くなります。 |
過多月経 | 出血が8日以上続くことで、子宮内膜症・子宮筋腫が疑われます。 |
無月経 | 妊娠しておらず、生理が3ヶ月以上ないこと。強いストレスや極端なダイエットが原因とされています。 |
生理痛
生理時の下腹部・腰・背中などの痛み(生理痛)には個人差がありますが、鎮痛剤の効果がなく、生活に支障をきたすほど痛みが強い場合は、ご相談ください。
器質性月経困難症 | 子宮内膜症や子宮筋腫など、何らかの疾患が原因で起こります。 |
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機能性月経困難症 | 子宮の収縮を促すために分泌されるプロスタグランジンというホルモンには痛み・炎症を起こす働きがあり、この異常分泌によって強い痛みを感じます。 |
不正出血
生理ではないときに子宮から出血することを不正出血といいます。ホルモンバランスが乱れると子宮内膜が刺激され、子宮内膜が剥がれて不正出血を引き起こします。また、何らかの疾患が原因で起きることもあります。
PMS(月経前症候群)
生理が始まる前までに出る症状のこと。排卵後のホルモンバランスの変化によって、以下のような症状が現れます。
身体的症状 | 腰痛、肩こり、頭痛、便秘など |
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精神的症状 | 集中力低下、やる気低下、イライラ、落ち込みなど |
自律神経失調症
めまいやふらつき、動悸、倦怠感、頭痛、不眠……といった多種多様な症状を引き起こす「自律神経失調症」には、ホルモンバランスの変化が深く関わっています。ホルモンの分泌と自律神経をコントロールする脳の部位が近いため、ホルモンバランスの乱れが自律神経の不調を招き、またその逆も起こり得ます。
不妊
ホルモンバランスの乱れも、不妊の原因の一つとなります。
高プロラクチン血症 | プロラクチンというホルモンが異常分泌する症状。これによって着床しづらくなります。 |
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黄体機能不全 | プロゲステロンの分泌量が減少すると、排卵後、子宮内膜を妊娠に適した状態に維持することが難しくなります。 |
排卵障害 | 排卵が行われない、または排卵できる卵子の準備が整わない状態です。 |
肌荒れ・ニキビ
女性ホルモンの分泌が減少すると、男性ホルモンの過剰分泌を招きます。それによって皮脂の分泌が活発になり、また毛穴も塞がりやすくなるため、肌荒れ・ニキビを引き起こすことにつながります。
更年期障害
加齢によるエストロゲンの減少で、のぼせやめまい、動悸、発汗など、さまざまな症状が起こります。
女性の発達段階にける様々な症状やお悩みについては、当院へご相談ください
ホルモンバランスを整え、症状の緩和を図る治療として、ピル、ホルモン療法、漢方薬などございます。
おひとりおひとりの抱えるお悩みに対し、医師と相談しながら治療選択ができます。
女性ホルモン検査とは
体内の女性ホルモン量を調べる検査で、下記の項目で確認できます。
黄体形成ホルモン(LH)
脳下垂体から分泌され、卵胞の発育に関与するホルモンです。
黄体ホルモン(LH)
排卵や黄体形成に関与するホルモンです。
このホルモンは、卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌に影響を与えます。
卵胞ホルモン(エストロゲン)
排卵と生理を起こすホルモンです。妊娠を継続する働きがあります。
この数値が低いと卵巣の機能が低下しており、無排卵や無月経、更年期などの可能性がありますます。
反対に数値が高いと妊娠の可能性がありますが、数値が高すぎる場合は、卵胞ホルモン産生腫瘍の疑いがあり、不妊の原因となります。
黄体ホルモン(プロゲステロン)
受精したときに妊娠の継続を助けるホルモンです。
数値が低いと黄体機能不全が疑われ、不妊の原因となります。
数値が高い場合は、卵巣や副腎の機能に障害があると考えられます。
プロラクチン
乳汁分泌に関与するホルモンです。授乳期間中は妊娠しないよう排卵を抑制する働きもあります。
この数値が高いと、「高プロラクチン血症」による排卵障害の可能性があります。
テストステロン
男性ホルモンのひとつですが、女性もテストステロンが分泌されています。
高値の場合は排卵障害の原因になる可能性があります。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)では高値になることがあります。
アンチミュ-ラリアンホルモン(AMH)
この数値が高いと卵子の在庫が多いということになりますが、妊娠率に比例するわけではありません。あくまで「受精までに必要な卵子がどのくらい残っているか」を示すものです。
ホルモンバランスの改善
ホルモンバランスの乱れには生活環境が大きく関わっています。普段の生活を見直して生活習慣の乱れはないか、心身のストレスになっていることはないか、知ることが大切です。